育児本ではないけど、育児中にこそ読みたいおすすめの3冊

育児のハウツー本ではないけれど、読んでいてハッとする本ってありませんか?

〇〇すれば頭がよくなる、〇〇すればコミュニケーション能力が伸びる・・etc..なんてことは一つも書いてないのに、親としての自分を顧みてしまうような、そんな本。

これからご紹介する本は、直接育児本じゃないけど、何かしら育児中の人の心に訴えるものがあるような本です。

・・・と少々熱っぽく語ってしまいまいしたが、もし得るものがなくても、単純に読んでいて楽しい本なので、気軽に手にとってみてください 笑。

どれもおすすめです!

育児本じゃないけど、育児中に読みたいおすすめ本

1.「カルト村で生まれました。」高田かや

カルト村で19歳まで育った著者が、カルト村を回想して子ども目線で描くコミックエッセイ。

村は農業を基盤としたコミューン。「カルト村」と聞くとおどろおどろしい想像をしてしまうが、教祖がいたり何かを崇めたりするわけではなく、昔の共同体を体現したような、ある側面では健康的とも表現できる村とも言える。

しかしながら、集団生活、子どもの頃からの労働、ミーティング、親と離れての暮らし、すべてのものは共有・自分のものは基本的にない、お金を使わない暮らし・・・

などなど一般的ではないこともあって・・・

現在は村を出て、一般の男性と結婚した著者のかやさん。

一般社会から見た、カルト村への夫のちょっとしたツッコミや、イラストのかわいらしさも手伝って、客観的な作品に仕上がっており淡々と読み進められます。

村では親と離れて暮らすので、親と会えるのは年に数回。そして世話係が子どもを叩く、長時間正座させる、食事抜きなどの体罰は当たり前。

そんな時に子どもだったかやさんがどう思っていたかがさりげなく書かれていて、

「小さな頃は親と一緒に暮らせないくらいなら、生まれてこなければとずっと思っていた」

「食事抜きになるのがひもじかった」「叩かれなければ大抵のことは我慢できた」

「受けた体罰は忘れないし言われたこともずっと頭に残っていて、未だに思い出してあれこれ考え込む日もあるのです」

などなど、親としては知っておきたいコメントが胸に残ります。

朝ごはんを食べないとどういう影響が出るのかがよくわかる描写が細かなエピソードも、親になったからこそ印象に残った気がします。

「私は子どもは生まない」と決意するシーンや、一般の子からお菓子をもらったからお返しを・・でもお金がないから・・・、と四苦八苦する話は、少なからず胸が締めつけられました。

続編『さよなら、カルト村』は、中学時代から村を出るまでのお話が書かれています。かやさんが将来を真剣に考えるエピソードも。

未来のことを考えていたはずなのに一番の希望は過去にあって。

自分の内側には知らず知らずのうちに蓄積した幼い頃の強い思いが残っていた

にはなかなか考えさせられるものがありました。

また、一般社会で母と一緒に暮らすことになったあと、母が余裕がなくてイライラしてるシーンがさらっと出てきます。

村にいた時は自分の労働だけやってたらオッケーで、娘たちと会うのも年に数回だったから母としての余裕があったらしいのですが。

こう、うん、やっぱ育児って「余裕」なんだな、って改めて思いました 笑。人手とか、時間とかね。

こうやって文字にすると重い漫画なのかと思われるかもですが、スッキリしていて読むのに体力を必要としない、サクサク読めるタイプの漫画です。

2.「ヴィオラ母さん」 ヤマザキマリ

「テルマエロマエ」で一躍有名になった漫画家、ヤマザキマリ。「ヴィオラ母さん」は、ヤマザキマリの母・リョウコの人生を娘の視点と絡めて綴られたエッセイ。漫画・写真付きでサクサク読める。

昭和8(1933)年生まれのお嬢様育ちのリョウコは、大好きな音楽を仕事にするために勘当同然で北海道へひとり移住。新天地で子ども(マリ)をもうけるが、思いがけず早々にシングルマザーに。

規格外の母・リョウコの平坦ではない人生を、娘・マリが語る。どんな母親で、どんな風に育てられたのか。ひたむきに、自分に正直に生きるリョウコの人生と人間性が心に刺さる一冊。

リョウコがどんな人物なのか。母親としてはどうだったのか。それは子ども目線ではどう感じたのか。いろいろな観点から読めるので興味深い。何よりリョウコの人間性に魅了されます。

壁だろうが床だろうが、どこにでも絵を描いてしまうマリを叱るのではなく、壁紙を全部剥がして、何度でも塗り替えられるペンキ仕様に変えたり。

再婚相手の母親・ハルさんと同居して(夫は海外)、離婚後はハルさんが失踪してしまうも手紙がきっかっけですぐに迎えにいって、亡くなるまで面倒をみて。

このハルさんのエピソードには胸に迫るものがあり、思い出してもその優しさと器の大きさに泣けちゃいます、ええ。

一方で、働くシングルマザーで忙しいリョウコ。リョウコの子どもであるマリはどう思っていたのか?

大好きな音楽で生計を立てるリョウコの遅い帰りを待つ寂しさから、トンボなどを部屋に放して紛らわせたり、夜中に道路沿いでいつ帰るのかを待ったり・・・

などなど胸が締め付けられるエピソードも出てくるのですが、だからといっていわゆる「母親らしさ」をマリが求めていたかといえばそれは違って。それはリョウコという人間がそう思わせてくれるのだなあと感じるのですが、

音楽家としてのリョウコに、母親らしい時間を割かせることは難しかったし、私もそれを望んでいなかった。

彼女の毅然とした無骨さは、子供に対するどんなきらびやかで情動的な愛情表現よりも、ストイックでまっすぐで、健康的な母性を余すことなく放出しているように思えるのだ。

彼女は、一人の人間として自立しているし、そして子どものことも一人の人間として敬っているのが伝わってきます。

彼女は私たち子供に依存したり、願望を託したりすることは一切なく(中略)私たちを心底から敬ってくれるリョウコには、そのままでいて欲しかった。

世間体を気にすることなく、他人との比較をしないリョウコ。

今の時代でもなかなか難しいのに、当時はものすごく気丈な精神が必要だったと思います。というのも、リョウコと同世代の人々で世間体を重んじ、他人と違うことを毛嫌いする人を多く見てきているので、時代だったのだと思いますが、そう思うと相当な強さがある女性なのでしょう。

長くなってしまったので、好きな一文の引用で次の本の紹介に行きたいと思います。

彼女は最初から子育てに対する心構えも意気込みも方針も持っていなかった。リョウコはこの世に生まれて来た子供の命をただ愛おしみ、慈しみ、敬い続けた。本当に、それだけである

3.「ド・レミの子守歌」平野レミ

料理研究家として有名な平野レミの、子育て中のエッセイ。

40年ほど前に書かれたもので、妊娠前、妊娠中、第一子が4歳になるまでのエピソードが書かれている。

笑えるエピソードが満載とみずみずしい文体と平易な言葉の相乗効果で、大変読みやすい。

もともと雑誌で連載していたものをまとめた本。1話あたり4ページくらいなので、ほんとにサクサク読めます。

妊娠中に霊感づいた話やおちんちんエピソードなど、あははと笑える話が大半。それと同時に切なくなったり勇気をもらえたり、泣けたりもする。

そして何より一生懸命に真剣に子育てをするレミさんにグッとくる本です。

「あー楽しい」と読んでいると、

子どもにとっては「のどか」がいちばんいいと思う。でものどかなところでもお母さんがキーキーしていたら何にもならない。のどかでない東京のまん中でも、子どものためにせめて私がのどかでありたいと思う。

なんて文があったり。

そして

子どもはかわいいけれど、朝から晩まで一年中子どもに合わせていると、これでいいのかしらという思いが、ふと頭をかすめることがある。子育てしか知らないで年を取っちゃうような気がしたり、もう少し社会と交わりを持ちたいと思ったりする。

この時代でも、そしてレミさんもこう思っていた時期があったのかと驚いたり。

息子の唱くんの細かな描写にも驚くし、真剣に悩んだりするレミさんに親近感を覚えます。

今のレミさんの世間的な印象だと奇想天外なおもしろい人、みたいなイメージがありますが、息子に手を焼いたり悩んで育児書を何冊も読んだりしていて、印象変わる人も多いかもしれません。

読むたびに明るい気持ちになれる、すがすがしいエッセイ。おすすめです。私の圧倒的にお気に入り本の中の一つ。

巻末には、本書に出てくる大人になった息子の唱くんが寄稿しています。

音楽の授業参観で母(レミさん)だけはノリノリのダンスで対応したらしく

デリケートな年頃の僕には、夢であってくれ! と願う光景を目の前で繰り広げてくれた。

には笑った。

まとめ!

どの本もおすすめです!

でも、まずどれか1冊・・という方がいればこんな感じです。

活字じゃなくて、漫画をサラッと読みたい。知らない世界をのぞいてみたいなら「カルト村で生まれました。」▼

他人と比較してしまい悩んでいるなら。くじけそうなら。一人の女性の生き様を見たいなら「ヴィオラ母さん」▼

明るい気持ちになりたい、笑いたい。他の人はどんな子育ての日々を送ってるのか知りたい。平野レミさんの若い頃が知りたいなら「ド・レミの子守歌」▼

一生懸命に生きている人々の話は、やっぱり心に響いてきます。定期的に読み返したい3冊です。

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